TECHNOLOGY

知識

接触帯電と摩擦帯電

接触帯電と摩擦帯電

 
 接触帯電を正確に表現すると、次のようになります。2つの仕事関数の違う物質を接触させると、仕事関数の小さい物質から、仕事関数の大きい物質の方へ電子が移動します。その結果、仕事関数の小さい方はプラスに、大きい方はマイナスに帯電します。この現象を「接触帯電」と呼びます。 

 仕事関数とは、物質の表面から電子1個を放出させるのに最低限必要な仕事量(エネルギー)のことです。単位は電子ボルトです。通常、金属の仕事関数は、4~5電子Vです。それは、内部にある電子とプラス電荷との員引力によって決まります。 

 1電子Vとは、1個の電子を1Vの電圧で加速して得られる仕事量です。たとえば、仕事関数が4電子Vの金属では、電子に4以上の仕事量を与えなければ、金属表面から飛び出させることはできません。つまり、仕事関数が大きいほど、電子は電気的に金属の表面に強く引き付けられるため、より大きな仕事量(エネルギー)を外部から与えないと電子は表面から解放されないことになります。 

 この電子の移動は2つの物質間の仕事関数の差がなくなるまで続きます。電子を受け入れた仕事関数の大きい方の物質は電子の量が多くなるため、マイナスの電気的性質を示します。一方、電子を放した仕事関数の小さい物質は、電子が不足するため、電気的中性が壊れて、プラスの電気性質を示します。こうして、一方がプラスに帯電し、他方がマイナスに帯電します。 

摩擦による帯電 

 摩擦による帯電の主要な要素は接触帯電です。物質を接触させた場合、物質の表面は、ミクロの世界では無数の微小な凹凸があるため、接触するところは凸部に限られ接触面積は小さくなります。また物質の表面は人手が触れることによる汚れや別の物質が触れることによる汚れで、多少なりとも導電性を帯びていることが多いものです。物質の表面が導電性を帯びていると、接触により静電気を発電しても漏電するため、帯電量は限られます。 

  このように、接触面積が限られたり、漏電が発生するため、1回の接触だけでは大きな帯電量が得られません。 しかし、何回か接触を繰り返すと帯電してきます。これは摩擦によるものです。つまり、摩擦とは、接触を繰り返すことによって、接触面積を増やす行為といえます。摩擦による帯電の帯電量とは(単位面積当たりの接触帯電による帯電量)×(摩擦による接触面積)のことです。 

 摩擦による帯電の別の要素に摩擦の圧力があります。圧電気(ピエゾ電気)がそれです。同じ物質同士を摩擦しても仕事関係が等しいため、帯電はしないはずです。しかし、実際には帯電します。不導体の物質に電気を加えると誘電分極して変形します。逆に、物質に圧力をかけて変形させると電気が発生します。これが圧電気です。圧電気の大きさは加えた圧力の方向により決まります。このように摩擦により圧電器が生じて帯電するため、摩擦による帯電の接触帯電の別の要素として知っておく必要があります。 
 

同じ物質なのに帯電?

 摩擦帯電の別の要素として、摩擦により発生する熱による帯電があります。非対称摩擦が起こすイオン移動による帯電がその例です。2つの棒状の物質を交差させ、片方を固定して置き、他方のみを動かします。他方のみを動かして固定した方の1点のみを摩擦することを非対称摩擦といいます。 

 動かした方は全体(広い面積)が摩擦され、固定していた方は交差していた部分(狭い面積)だけが温度上昇し、物質のイオンが移動しやすくなり、移動します。摩擦面積が広い方(動かした方)は温度の上がり方が少なく、物質のイオンは移動しにくい状態のままです。移動した物質のプラスイオンを受けた方がプラスに帯電し、渡した方がマイナスに帯電します。または移動した物質のマイナスイオンを受けた方がマイナスに帯電し、渡した方がプラスに帯電します。 
 

固定した氷は温度が上昇する 

 非対称摩擦の例として、温度が上昇すると溶けやすい氷の棒の摩擦帯電があります。2本の氷の棒を交差させて、片方を固定し、他方のみを動かします。このとき、固定した氷の棒の1点のみを摩擦するようにします。固定した方の1点(摩擦面積の小さい方)はマイナスに帯電し、動かした方(摩擦面積の大きい方)はプラスに帯電します。どうでしょうか。この現象をさらに深く考えて見ましょう。 
 2本の氷の棒をこすって非対称摩擦をすると、両者は互いに同じ仕事量を与えあいます。このとき、摩擦面積の大きい方(動かした方)は広い面積に仕事量が分散されるため、摩擦による温度上昇は少なくなります。他方、摩擦面積の小さい方(固定した方)は、狭い面積に仕事量が集中するため、摩擦による温度上昇が大きくなります。摩擦面で温度が高くなった水の分子は、溶解して水素イオン(H+)と水酸基イオン(OH-)になります。 
 水素イオン(H+)は、水酸基(OH-)に比べてイオンの移動度が高いため、高温側の氷の棒から、低温側の氷の棒へと移動します。その結果、水素イオン(H+) を受けた低温側の氷の棒はプラスに、水素イオン(H+)を渡した高温側の氷の棒はマイナスに帯電します。これが同一物質である氷の棒を非対称摩擦したときの摩擦帯電です。 

 
 

ポリエチレンの棒同士の摩擦帯電 

  非対称摩擦の別の例としてポリエチレン同士の摩擦帯電があります。2本のポリエチレンの棒を交差させて、片方を固定し、他方のみを動かします。このとき、固定したポリエチレンの棒の1点のみ摩擦します。摩擦面積の小さい方はプラスに帯電し、大きい方はマイナスに帯電します。 

 この現象も氷の棒の場合と同様に考えることができます。2本のポリエチレンの棒をこすって非対称摩擦をすると、両者は互いに同じ仕事量を与え合います。このとき、摩擦面積の大きい方(動かした方)は広い面積に仕事量が分配されるため、摩擦による温度上昇は少なくなりますが、摩擦面積の小さい方(固定した方)は摩擦による温度上昇が大きくなります。その結果、低温側のポリエチレンの棒はマイナスに、高温側のポリエチレンの棒はプラスに帯電します。 

 
 

加圧による帯電 

 摩擦帯電の項でも述べたように、物質に圧力を加えることでも静電気が起こります。誘導体の物質に電圧を加えると、分極して変形します。それとは逆に、物質に圧力をかけて変形させると、電荷が発生します。この両方の現象を圧電効果(ピエゾ効果)と言います。物体に圧力をかけて出てきた圧電気の大きさは、加えた圧力、また極性は加えた圧力の方向によって決まります。 
 

加熱による帯電 

 分極現象を起こすには、物質内部の結晶構造を変化させることですから、圧力以外にも何らかの方法が考えられます。実際にはもう一つの重要な分極現象として、「焦電効果」があります。誘導体結晶を加熱すると、結晶構造が変化して、表面に分極電荷が現れる現象を焦電効果といいます。この場合、加熱といっても、人体から出る赤外線を受けただけでも分極するほど敏感です。 

 これによって、発生した電気を「焦電気」または「パイロ電気」と呼んでいます。この焦電気は通常、表面に付着した空気中のイオンなどにより中和されていますが、温度を変化させると分極の大きさが変わるため、表面電荷の変化分だけが観測されます。焦電効果は、熱によって物質の結晶格子が振動し、ひずみや構造の変化が生じるものと考えられますが、熱を加えると物質は膨張するので、その圧力により新たな分極が発生するものです。したがって、前者(加熱による分極)を1次の焦電効果、後者(熱膨張による分極)を2次の焦電効果と呼び、実際の帯電量はこの2つの効果による量の合計になります。 

 

イオンによる帯電  

 ある種の物質では内部に動けるイオンが混在していて、結晶構造を変化させなくても、イオンを直接移動させることによって分極が起き、帯電することがあります。この現象は流動性のある液体物質の中でよく起こります。液体中ではプラスイオンのほかに、マイナスイオンがほぼ同数存在しています。これらのイオンにエネルギーを与えると、プラスとマイナスが別々の方向に移動します。こうして分極現象が起き、液体内に電位が発生し、電界が発生します。 

 また、物質にプラスの空気イオンを吹き付けるとプラスに、マイナスの空気イオンを吹き付けるとマイナスに帯電するなど、イオン放射によっても帯電します。 

 

誘導分極、静電誘導による帯電  

 絶縁体に電界を加えると、分子が誘導分極を起こし帯電します。絶縁体は、一般的に電界がなくなると戻りますが、ヒステリシス性を持つものもあります。半導体や液晶ディスプレイなどで知られる強誘電体メモリー(FeRAM)は、強誘電体の分極による帯電を記憶機能として利用したものです。 

 このほか、導体を電界の中に置くことによっても静電誘導を受けます。このとき、電界の上流または下流の片側をアースまたはほかの導体に接触させると、その電荷は逃げ、導体は残った電荷が滞留して帯電します。

 




 

CONTACT

お電話でのお問い合わせ

053-482-3412

FAXでのお問い合わせ

053-482-3414